インターネットのサイトや地図の検索、メール、アンドロイド携帯など、生活の至る所で「グーグル」を利用する人は少なくないだろう。そのグーグルが3月1日に、新しい個人情報保護の指針(プライバシーポリシー)を導入した。
その内容は、メールの「Gmail」や動画配信の「YouTube」などグーグルが提供している60以上のサービスにおいて、別個に管理していた個人情報をひとつのユーザーアカウントに統合するというもの。今まで約70もの指針が存在していたが、これによって同社のほとんどのサービスの個人情報が一括管理されることになる。
では、グーグルのサービスはどう変わるのか。ビデオジャーナリストの神保哲生氏はこう解説する。
「グーグルは収益の約9割を“広告”で稼いでいます。検索やメールでの使用頻度が高い言葉を機械的に集め、最も関心を持っているであろう情報をそのユーザーにピンポイントで提供する。クライアントはその宣伝効果を期待してグーグルに掲載料を払います。今回の新指針は、その“精度”を高めるという目的があります」
どういうことか。
「例えば『Gmail』で『メロン』についての話題をメール送信するとしましょう。すると『Gmail』がその単語を拾って、『メロン』に関連する広告を『Gmail』上に表示します。しかし、単語だけでは、そのユーザーが『メロンが嫌い』な場合だってあるわけで、それでは有効な広告は打てません。ところが、この新しい指針によって、ユーザーが所有しているアカウントを基に、『Gmail』だけでなくグーグル検索の内容や『YouTube』での動画閲覧記録など幅広いサービスから多角的に個人情報を集めることができ、よりユーザーの趣味嗜好に合った広告を提供できるようになるのです」(神保氏)
逆に言えば、ユーザーは自分の興味がある情報を効率よく手に入れられる。グーグルユーザーにとっては歓迎すべきことのように思えるけど……。
「ただ、この新指針によってグーグルにインターネット上の行動はすべて筒抜けになります。そして、その情報が何に使われるか、ユーザーにはとても見えにくい。さらに、その個人情報が流出してしまうリスクだってあるのです」(神保氏)
グーグルに自著を勝手に商用目的でコピーされ、同社を著作権法違反で警察に訴えた、ルポライターの明石昇二郎氏もこう懸念する。
「グーグルは遵法(じゅんぽう)精神あふれる会社だと思っています。それはつまり、公権力、例えば警察などがしかるべき権限をもって『個人情報を差し出せ』と言えば、グーグルは素直に応じるということ。今、児童ポルノを所有しただけで逮捕される『児童ポルノの単純所持禁止法』が国会で定期的に審議されていますが、これが成立してしまえば、まずターゲットにされるのが児童ポルノが氾濫しているインターネットです。警察としてはグーグルが持っている精度の高い情報はぜひとも見たいはず。公権力による恣意的な捜査にグーグルが利用されるという可能性がないとは言い切れません」
ちなみに、グーグルが新指針の下「集める」と“宣言”している個人情報は氏名、メールアドレスはもちろん、電話番号やクレジットカードの番号にも及ぶ。また、アンドロイド携帯を使用している人は通話相手の番号、通話日時、現在位置情報なども収集の対象だ。
これを「不気味だ」と思うか、「便利だから、いいじゃん」と思うか。それはユーザー個々の判断によるが、少なくともグーグルを使用する際は「個人情報を売って、サービスを利用している」という意識を持ったほうがいいだろう。
(この記事は社会(週プレNEWS)から引用させて頂きました)
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