グーグルが1日に導入した新たなプライバシーポリシー(個人情報保護方針)が波紋を広げている。グーグルが運営する60以上のサービスごとに管理していた利用者情報を集約するもので、グーグルは「お客様に合わせてカスタマイズ(好みに合わせて調整)したコンテンツ(サービス)を提供する」と説明する。ただ、プライバシー侵害や個人情報流出への懸念から慎重論も根強い。【種市房子、ワシントン平地修】
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グーグルのサービス利用者は、まず名前などを登録する「アカウント」を作る。新指針では、アカウントが同じであれば、60以上のサービスをまたいで情報を管理できる。検索サービスで何を探したか、グーグルの動画投稿サイト「ユーチューブ」でどんな動画を見たかなどの情報を集め、好みや行動パターンを分析し、サービスに応用する。利用者が著名な料理家をたびたび検索していた場合、「ユーチューブ」を使う際に、真っ先にその料理家の動画が表示されるといった使い方ができる。
グーグルの狙いは、広告収入のアップにあるようだ。収集する個人情報は、電話番号やクレジットカード番号、スマートフォン利用者の位置情報など多岐にわたる。これらをもとに各利用者の嗜好(しこう)を分析すれば、効果の高い広告を打てる。
新指針導入の背景には、ネット大手交流サイト「フェイスブック」の躍進があると指摘されている。同社の11年の売上高は前年比約88%増の37億1100万ドル(約3000億円)で、大半が広告収入とされる。利用者が実名や年齢、趣味まで登録しているため、対象者を絞った広告を打てるのが強みで、同じく広告収入が収益の柱のグーグルも、対応を迫られた形だ。
◇「安全管理体制に不安」
グーグルの新方針に対し、個人情報の侵害や流出への懸念が広がっている。米国では民主・共和両党の議員8人が1月、「利用者は個人情報の収集を拒否する権利がある」として、グーグルに質問状を提出。36州・特別区の司法長官も「プライバシー侵害への懸念」を表明する書簡を送付した。プライバシー擁護団体が、新方針の差し止めを裁判所に申し立てる動きもある。
欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会のレディング副委員長は、グーグルの手続きに透明性が欠けるとして「EU法に違反する」と指摘。国内では、総務省が2月末、個人情報保護法を守って利用者に分かりやすい説明をするよう、グーグルに文書で要請した。
グーグルのプライバシーを巡る問題は、今回が初めてではない。町並みの画像がインターネットで見られる「ストリートビュー」が個人情報を特定すると物議を醸したほか、10年には無線LAN経由で誤って個人情報を収集していたことが発覚。昨年には、同社のソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)を巡るプライバシー侵害が問題となった。個人情報保護に詳しい岡村久道弁護士は、グーグルの一部利用者の情報が誤って外部に開示されていた問題を引き合いに「安全管理体制に不安が残る」と、情報流出リスクの懸念を指摘する。
グーグルはこれまでも、一部のサービスで個人情報を共有しており、担当者が同社の公式ブログで「新方針で新たな追加的情報を集めることはない」と説明するなど、不安解消に躍起だ。ただ、今回は集める情報が広範に及ぶ。総務省は「検索履歴を無効にする方法など、個人情報を出さない手法を説明することが大切」(幹部)として、グーグルの対応を見極める考えだ。
(この記事は経済総合(毎日新聞)から引用させて頂きました)
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